資産運用

残念なことに、世界は一つの危機から他の危機へと向かっているように見える。COVID-19の世界的大流行は、あらゆる産業において我々の従来の働き方や困難を乗り切る強靭さに対する挑戦となった一方、ウクライナの危機は我々の資産運用業界をかつて経験したことのない、多様かつ同時多発的な課題とリスクにさらすことになったのは疑いようがない。

第一に、あらゆる金融機関と同様に、資産運用会社はロシアに課せられた数多くの制裁措置に、きわめて迅速に適応しなければならなかった。米国や欧州の制裁措置により投資ユニバースが縮小した一方で、外国人投資家の保有するロシア資産の換金や本国送金を禁止するロシアの対抗措置により、オペレーション業務は大きく混乱した。その後、SWIFTネットワークへの制裁措置によって、ロシアの銀行との資金決済が実質的に不可能となった。こうしたことから、ロシア資産の公正価値が問題となり、その結果、ロシアの資産にその大部分を投資している多くの商品は、投資家の追加投資や解約を停止せざるをえなくなった。ロシア資産の組み入れが少ないファンドについては、投資家が資産の部分的な流動性を享受できるよう、サイドポケットが再導入された。

欧州に始まり、後に台湾に伝播した地政学的リスクの深刻化は、マクロ経済に劇的な波及効果をもたらし、景気の下振れリスクの増大や景気後退を懸念する市場のボラティリティを高めた。お客さまの長期投資の資産の受託者として、資産運用会社は自らの市場調査・分析能力を最大限に活用して、市場動向を正しく読み取り、資産の流動性とボラティリティを厳格に制御しつつリスク管理の水準を引き上げる必要があった。

世界はまた、金融市場への投資の将来のリターンを蝕むインフレの復活と市場金利上昇を背景に、新たな経済レジームへの転換期に明確に入ったといえる。我々のお客さまは、今や投資資産をインフレから守る必要があり、そのためには、実物資産、インフレ連動債券や、エネルギー、商品、銀行など特定の株式セクターといった、インフレ耐性の高い資産クラスにポートフォリオを再配分する必要がある。

これらはすべて、経済危機に対する一般的な対応といえる。しかし、ウクライナ危機がエネルギー領域に発展したことは、ESG (環境、社会、ガバナンス)の動向や資産運用会社の業績に深い影響を及ぼした。欧州諸国がロシアのガスと石油の供給量削減という圧力にさらされる一方で、エネルギー資源の対外依存度低減と消費自粛が二つのキーワードとなり、脱炭素化という長期計画を混乱させた。他方、これにより日本、欧州ともに、原子力エネルギーを「化石エネルギーよりグリーン」と考える長年のジレンマが解消し、「ネットゼロ」の世界への移行をより促すこととなった。

その結果、欧州諸国の政府は、エネルギー産業のロシアへのエクスポージャーをゼロにする方向性を新たな目標と定め、欧州の規制当局は、グリーンウォッシングを回避するためにESGの要求水準を引き上げ続けた。そうしたなか、資産運用会社はESG評価の多くの側面について再考を余儀なくされた。ロシアとの協力関係を続ける企業が直面する風評リスクを考慮する必要があり、S(社会)とG(ガバナンス)の評価に実質的な影響を与えた。

しかしながら、2022年は、化石エネルギー生産者や防衛産業といった伝統的にESG格付けの低い分野の企業が良好な財務実績を示し、残念ながらESGを重視した投資の多くは低パフォーマンスに転じた。

戦争自体による環境破壊と、石炭エネルギーへの依存度が一時的に高まる可能性は、気候変動対策にとって明らかに逆風である。一方、再生可能エネルギーへの移行を加速させる必要性を考慮すると、規制当局はESG関連ファンドに適用される要件や情報開示を強化せざるを得なくなり、欧州はESG投資のリーダーとしての地位をさらに高めることになると考えられる。

主要な問題および提案

委員会ミーティングスケジュール

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