医薬品

日本では、高齢化の進展により国民医療費が増大を続ける一方で、医薬品市場は近年導入された様々な薬価制度の影響でむしろ抑制されていることが示されている。

医薬品市場2022年度の国民医療費は46兆6,967億円、前年度に比べ1兆6,608億円、3.7%の増加となっている。人口一人当たりの国民医療費は37万3,700円、前年度に比べ、4.2%の増加となっている。厚生労働省が報告している医薬品市場の規模は2017年度分以降公表されていないものの、IQVIAによると2023年は11兆2,806億円、前年から3.1%成長した。とはいえ、2018年度薬価制度抜本改革後、2019年10月の消費税率引上げに伴う全品目に対する薬価改定も実施された上、2021年度には初めての中間年改定が実施された。2018年以降は実態として毎年の薬価引下げが行われている状況にある。2024年度の薬価改定においては医療費ベースで約1,200億円が削減された。

薬価制度改革2024年度薬価制度改革では、「創薬力強化とともに、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消を実現する」ことを目指して、革新的医薬品の日本への迅速導入や、小児用医薬品を含む新薬の評価について充実が図られるなど、イノベーション推進に前向きな制度改革が実施された。革新的な新薬の開発に向けた投資対象先としての日本の医薬品市場の魅力度をさらに高め、新たなドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスを生じさせないためにも、イノベーション推進の前向きな流れを継続していく必要がある。

中間年改定2025年度中間年改定については、物価の高騰、乖離率の推移、安定供給の懸念、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの状況、日本市場の魅力等の状況が、4大臣合意がなされた当時とは異なっていることから、製薬業界からは中間年改定を実施する状況にないことが繰り返し伝えられた。しかしながら、結果として「国民負担の軽減」「創薬イノベーションの推進」「医薬品の安定供給の確保」を基本的考えとして中間年改定が実施された。2024年度制度改革によるイノベーション推進に向けた流れや政策の一貫性といった観点で、課題があったと考える。 

費用対効果評価制度:2019年の本格運用開始以来、2年に1回の見直しにより費用対効果評価制度は整ってきた。2024年度の改定においては、費用対効果評価制度の透明性は一定程度高まったものの、依然として課題に直面している。例えば、プロセスが不透明であり評価対象品目の選定基準が曖昧であること、費用対効果の判断のための科学的根拠が不十分であること、今後価格調整範囲が拡大されるとイノベーションに対するインセンティブが機能しなくなる可能性があること、患者の関与が限定的であること等が挙げられる。

欧州での経験からCEA/HTAの価格調整範囲を拡大していくことや保険償還の可否判断に用いることは患者さんの革新的な新薬へのアクセスを阻害することにつながるだけではなく、薬価の予見性を損なうことから更なるドラッグラグ・ロスに繋がりかねない。また、アカデミア、政府、産業界にとって大きな業務負担を強いるものにつながる。日本にはすでに薬剤費用をコントロールする有効な仕組みが存在することから、CEA/HTAが更なる薬剤費抑制の仕組みになってはならない。欧州においても多くの課題に直面していることから、あくまでも薬価制度を補完する位置づけを堅持するべきである。 

新たな薬事制度の導入近年、欧米では承認されているが日本では開発が行われていない医薬品が増加する、いわゆる「ドラッグ・ロス」が拡大していると指摘され、医療上必要な医薬品の導入を促進するため、また、医薬品の堅牢で効率的な品質確保、安定供給確保のため、薬事規制の観点から必要な見直し等に関する検討が行われた(創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会、以後、あり方検討会)。この検討会の協議により、希少疾病用医薬品指定、小児開発や日本人データの必要性に係る通知等が発出され、また、治験エコシステムを確立するための検討も開始された。ドラッグ・ロス/ラグを少なくするための薬事規制やシステムの改善を継続すべきである。また、医薬品の製造方法の管理に関して、中等度変更事項の導入(試行)等新たな制度検討も行われている。さらに、薬機法改正のための制度部会(以後、制度部会)において、上記のあり方検討会での検討事項に加え、GMP適合性調査等についても見直しを行うよう提言がされたことから、更なる協議が行われる予定である。今後の検討において、国際的整合性を見据えたGMP適合性調査を含む品質に関する薬事制度の確立を求める。

 

主要な問題および提案

Chairman

Mr. Takahiko Iwaya
EFPIA Japan
(President and Representative Director, Sanofi K.K.)
EFPIA Office:
Tokyo Opera City Tower, 3-20-2
Nishi-Shinjuku, Shinjuku-ku, Tokyo 163-1488
Phone: 03-6301-4094

EBC Medical Equipment and Diagnostics Committee Secretariat contact:
E-mail:  EBC-MDX@ebc-jp.com

Members

Alexion Pharma
AstraZeneca
Bayer Yakuhin
Bracco Japan
Chugai Pharmaceutical
CSL Behring
Ferring Pharmaceuticals
GE Healthcare Japan
Genmab
GlaxoSmithKline
Guerbet Japan
Ipsen Pharma Japan
LEO Pharma
Lundbeck Japan
Merck Biopharma
Nihon Servier
Nippon Boehringer Ingelheim
Novartis Pharma
Novo Nordisk Pharma
Nxera Pharma Japan
Sanofi
UCB Japan