日本では、高齢化の進展により国民医療費が増大を続ける一方で、医薬品市場は近年導入された様々な薬価制度の影響でむしろ抑制されていることが示されている。
医薬品市場:2021年度の国民医療費は45兆359億円、前年度に比べ2兆694億円、4.8%の増加となっている。人口一人当たりの国民医療費は35万8,800円、前年度に比べ、5.3%の増加となっている。厚生労働省が報告している医薬品市場の規模は2017年度分以降公表されていないものの、IQVIAによると2022年は過去最高額の10兆9394億円、前年から3.2%成長した。とはいえ、2018年度薬価制度抜本改革後、2019年10月の消費税率引上げに伴う全品目に対する薬価改定も実施された上、2021年度には初めての中間年改定が実施された。2018年以降は実態として毎年の薬価引下げが行われている状況にある。2023年の薬価改定においては医療費ベースで約3,100億円が削減された。
薬価制度改革:2018年の薬価制度の抜本改革以降実施された一連の薬価制度改革は、本来両立するとされていた「国民負担の軽減」と「イノベーションの推進」のうち、前者に大きく偏った方向の改革であったと言わざるを得ない。日本における薬価及び医薬品事業の予見性が大きく損なわれるとともに、革新的な新薬開発に向けた投資対象先としての日本医薬品市場の魅力度が大きく低下している。結果として「ドラッグラグ」「ドラッグロス」と呼ばれる、海外で承認された革新的医薬品の日本市場への導入の遅延や、そもそもそれらが日本市場へ導入されない状況が顕在化している。
中間年改定:2021年4月には、中間年改定が初めて実施されたが、対象品目については、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」、中医協における議論、「骨太の方針2020」等の趣旨から大きく逸脱し、平均乖離率の0.625倍を超える品目とされ、薬価制度の予見性が著しく毀損されることとなった。2023年の中間年改定においても部分的に新薬創出等加算品目に対しては一定の配慮はされたものの、2021年と同様の線引きがなされ、「国民負担の軽減」と「イノベーションの推進」を両立する観点からは依然としてバランスを欠く改定となった。
費用対効果評価の導入:2019年より費用対効果評価(CEA)を用いた医療技術評価(HTA)が本格導入され、約5年の運用事例から、臨床上の位置づけや価値が十分に反映されないなど科学的妥当性の観点や、情報公開を通じた第三者による同制度の事後検証を可能とする透明性の確保など課題が山積している。欧州での経験からCEA/HTAの価格調整範囲を拡大していくことや保険償還の可否判断に用いることは患者さんの革新的な新薬へのアクセスを阻害することにつながるだけではなく、薬価の予見性を損なうことから更なるドラッグラグ・ロスに繋がりかねない。また、アカデミア、政府、産業界にとって大きな業務負担を強いるものにつながる。日本にはすでに薬剤費用をコントロールする有効な仕組みが存在することから、CEA/HTAが更なる薬剤費抑制の仕組みになってはならない。欧州においても多くの課題に直面していることから、薬価制度を補完する原則的な位置づけを堅持するべきである。
医薬品のその他のアクセス障壁:新薬は薬価収載後1年間、安全対策の目的で処方期間の上限は原則14日に制限されている。一方で医薬品の安全対策は市販直後調査や医薬品リスク管理計画の導入で以前と比べると充実してきており、現在はその制限の合理性は低い。仕事や学業などの日常生活と新薬による治療の両立を望む患者さんにとっては、大きな負担である。また希少薬において、日本固有の規制要件を満たすための特別包装への投資は、サステイナビリティの実現とは相いれないものであり、ドラッグラグ・ロスを引き起こす一因となりうる。
DPC制度についても、革新的且つ高額な薬剤、特に希少薬において高額薬剤判定から外れる際に適切な分岐設定がされず、入院患者さんへの使用が避けられている状況が判明している。継続投与を前提とする高額薬剤は、抗HIV薬や血友病治療薬と同様にDPCの対象から除外すべきである。なお高額薬剤判定は年4回の新薬収載時に実施されているが、効能追加の場合は承認から判定までに数か月のタイムラグがあり、その期間は患者さんへの使用が制限される。既収載品の効能追加承認時は、入院医療において速やかに使用できるよう高額薬剤判定の運用を改めるべきである。ゲノム医療における薬剤開発が進む一方で、薬事および保険償還の規制により、適切な患者へ対して迅速に治療薬が届けられないアクセス障壁も生じている。診断薬の規制の改善や遺伝子パネル検査の診療報酬上の改善が必要であると考える。これらの様々なアクセス障壁をもたらしている制度運用については、日本市場への投資優先度を下げないためにも早急に改善されるべきである。
新たな薬事制度の導入:従来は通知ベースで実施されていた先駆け審査指定制度(先駆的医薬品制度に名称変更)、条件付き早期承認制度が法制化され、また新たに特定用途医薬品制度が創設され昨年施行された(2020年9月1日)。近年、欧米では承認されているが日本では開発が行われていない医薬品が増加する、いわゆる「ドラッグ・ロス」が拡大していると指摘され、医療上必要な医薬品の導入を促進するため、また、医薬品の堅牢で効率的な品質確保、安定供給確保のため、薬事規制の観点から必要な見直し等に関する検討が行われている(創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会)。さらに、日欧のGMP相互承認の対象医薬品が2018年7月より拡大され、化学的医薬品の原薬や無菌製剤、生物学的医薬品なども含まれることとなった。加えて2019年12月4日の薬機法改正により、今後GMP適合性調査の対象が製造所単位となる調査も加わった。これについては、確実な日欧のGMP相互承認の実施及び将来的なGMP適合性調査の海外との整合性の調整を求める。
主要な問題および提案
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作成日:
薬価制度
進捗:
新規 -
作成日:
費用対効果評価などの医療技術評価(HTA)
進捗:
新規 -
作成日:
国際調和(臨床試験環境)
進捗:
若干の進展 -
作成日:
承認審査等に係る新たな動き
進捗:
若干の進展
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