宇宙

日本は、宇宙を重要な産業・商業分野と位置付け、国家安全保障上の資産として扱われている。

内閣府に設けられた宇宙政策委員会と宇宙開発戦略推進事務局(National Space Policy Secretariat: NSPS)は現在、すべての省庁にわたる日本の宇宙政策を策定する。また、2020年6月には、今後10年間の宇宙基本計画が閣議決定された。日本の宇宙政策の目的は、1. 宇宙における安全保障の確保、2. 災害・環境問題の緩和への支援、3. 宇宙探査の拡大、4. 宇宙産業の利用による経済成長とイノベーションの促進である。宇宙基本計画は、日本の宇宙産業と技術によって達成された実績を高く評価した一方、日本が世界の進展に遅れをとっていることも指摘した。東京は、2023年6月に「宇宙安全保障構想」を発表し、「外交、防衛、経済、情報に対する国力の地政学的競争の主要な場、及びこれらの国力を支える科学技術イノベーション」と称するとともに、事業成長分野としての民間のイノベーションに対する予算支援を内容とする新たな宇宙基本計画を公表した。

宇宙の安全保障、宇宙産業の市場成長、そして絶え間ない宇宙利用の重要性は、政府主導の宇宙開発から民間主導の新時代へと移行している。政府は、小型衛星や小型打上げ機に携わるスタートアップ企業を支援し、それが既存インフラの下流に位置する応用分野を活性化することを奨励する政策を展開している。しかし、通常、政府は開発資金の調達を支援するだけで、調達を保証するものではないため、多くのスタートアップ企業は利益を得られない。日本の課題は、強力な宇宙産業を維持するための政府調達の拡大と、商業輸出市場の成長である。

2020年、政府は、防衛省の航空自衛隊に「宇宙作戦隊」を新設した。空自では、約20名の隊員が、日本の衛星に対不審な動きや電磁波干渉を監視する。また、宇宙ゴミ及び軌道上の未確認物体を、光学望遠鏡で監視する予定である。

欧州は民間衛星市場で大きな成功を収めている。従来、日本は米国の衛星を購入していたが、2021年3月、スカパー JSATとエアバス・ディフェンス・アンド・スペース社は、Superbird-9通信衛星の調達契約に調印した。日本の衛星運営会社が欧州衛星を選定したのはこれが初めてである。EBCは、この進展を歓迎し、将来、活発な日欧産業交流が深まることを期待している。

また、政府衛星については、1990年以降、事業衛星や実用衛星が国際入札により調達されてきた。これまで国際入札された政府衛星は運輸多目的衛星(MTSAT)/気象衛星シリーズおよび放送衛星(B-SAT)シリーズである。外国企業による直接応札は法的に可能であるが、入札書類は日本語で記載せねばならず、他にも、コミュニケーションや発表の大部分は日本語で行われるなど様々な法的かつ実務的な「見えない障壁」が存在する。入札対象外の政府衛星プログラムとしては、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の科学技術衛星、経済産業省管轄下のいくつかのプログラム、および防衛目的のリモートセンシング情報収集衛星(IGS)がある。NSPSの優先事項は、日本の測位・航行・計時衛星システムである準天頂衛星システム(QZSS)である。Xバンド防衛通信衛星プログラムも進行中であり、すでに2機が打上げられている。日本の宇宙関連機関の次の大きなテーマは宇宙ゴミと宇宙状況監視になる。50機の小型衛星からなる早期警戒低軌道コンステレーションが検討されている。

経済産業省は、政府開発援助(ODA)資金を通じて新興国に衛星システムを供給するべく、国内メンバー限定の産業コンソーシアムを積極的に支援する。パッケージはしばしば、衛星、打上げサービス、運用、データ解析、保守、人材育成、技術移転およびその他のサービスを含んでいる。EUの政策とは違い、日本の ODA契約は紐付き、つまり日本国内の業界に発注しなければならず、結果的に、外国のメーカーやサービス・プロバイダーを基本的に排除するゆがんだ市場を生み出している。内閣府は官民一体による宇宙システム海外展開タスクフォースを主導している。

官民パートナーシップ(PPP)プロジェクトの持続的なリスクとして、政府用と商用双方のペイロードを搭載する衛星の場合、衛星の製造と打上げに関する限り「政府用」と宣言される可能性がある。したがって、外国の衛星メーカーや打上げ機は、日本の商業衛星市場から段階的に排除されるおそれがある。

打上げ機については、国際的な開発競争が激化しており、低コスト化の需要が持続不可能なレベルに達している。現在日本はH3を、欧州はアリアン6の開発を行っている。日本はH3を、現在欧州はアリアン6の開発を行っている。両打上げ機の開発は、新型コロナウィルス の影響と技術的な問題による遅れに直面している。2023年3月にH3の最初のフライトが失敗した一方、アリアン6は2024年に打ち上げられる可能性が高い。

日本の技術の遅れと将来の競争力の喪失を懸念して、専門家は次世代の「革新的未来宇宙輸送システム」に向けた概念と戦略の研究を始めた。文部科学省が、その実現に向けたロードマップを検討するために設置した委員会では、政府の任務と月と火星への民間ミッションは、H3の発展型によってい支えられる。より長期的なテーマとして、数百億ユーロの市場があると推定される2地点をつなぐ(東京・パリ間のように)の高速商業旅行のために完全再利用できる宇宙機の開発が提案されている。これらの開発には、国際協調の重要性が言及されている。画期的な将来の宇宙交通体系の再利用可能性については、フランスの宇宙機関CNES (国立宇宙研究センター)、ドイツの航空宇宙センター(DLR)、JAXAがすでに、縮小スケールでの再利用可能性実証機であるカルリストについて取り組んでいる。

小型衛星やコンステレーションに関する打上げ活動は、予想以上にダイナミックである。しかし、個々の取り組みの将来の見通しが不透明であるだけでなく、衛星製造、打上げ、サービスを一つの企業に統合する垂直統合型を展開する企業もあり、これはアクセス可能な市場の拡大にはつながらない。この点では、日欧も同様であり、商業打ち上げ契約を必須とする政府の打ち上げ市場が不十分である。H3とアリアン6は現在開発中であり、改良版が必要であるため、これらに全面的に協力すれば、大幅なコスト削減とイノベーションの手段につながり、競争力の向上と国際貢献の拡大につながる。また、日本や欧州が独自の宇宙輸送システムを維持していくためにも、おそらく不可欠であろう。

日欧ともに、固体燃料ロケットを運用している : 「イプシロン(日本)」と「ベガ(欧州)」。燃焼ガスが生成する金属片が軌道に残留する場合は宇宙ゴミの問題を引き起こし、打上げ時の燃焼ガスの土壌汚染への対応も必要である。これらは固体ロケットの宇宙と地球の持続可能性における日欧共通の課題である。

地上設備への投資は、安全保障・防衛用途推進によって拍車が掛けられてきた。日本の宇宙活動はますます、農業、漁業、地球物理学用途向けの、画像処理・判読のための地上設備にからむものとなっている。さらに安全保障に関わる応用技術は国防能力を高める。この分野では保護的調達方法が用いられており、外国のサプライヤーには不利となっているが、三菱電気の地上システムは価格が高すぎたため、JAXAやJSAT はKRATOSの地上システムとアンテナを購入した。

日本には、人工衛星、打上げ機、宇宙サービスのあらゆる分野で活動する多くのスタートアップ企業が存在する。これらのベンチャー企業の多くは、多数の外国人従業員を雇い、最初からプログラムに国際的な活動を盛り込んでいる。EBCは、日本政府が日本と欧州のベンチャー企業の協力と統合を積極的に推進することを望む。

主要な問題および提案

委員長

Mr. Nikolaus Boltze
Country Representative
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2-3-1, Minatomirai
Nishi-ku, Yokohama 220-6011
Tel: +81-45-211-4653
Fax: +81-45-211-4609

委員会ミーティングスケジュール

会議の開催場所については、 EBC ( ebc@ebc-jp.com) にお問い合わせください。

2023
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